インテグナンスVR導入で一人当たり年間100時間の現場確認工数削減 〜JNC石油化学 市原製造所が次世代へ継承する「現場資産」〜

JNC石油化学株式会社
住所
千葉県市原市五井海岸5番地の1
Web
https://www.jnc-petrochemical.co.jp/
設立
1962年6月
事業
自動車部材や家電、包装フィルムに使われるポリプロピレン、高密度ポリエチレン、塗料・接着剤原料となるオキソアルコールなどの開発・生産

日本の素材産業を牽引する総合化学メーカー、JNC石油化学株式会社。同社の市原製造所では、自動車用ポリプロピレン等の樹脂類やアルコールや可塑剤の原料の製造拠点として、日本の合成樹脂産業を根幹から支える重要な役割を担っている。

本製造所では、設備の老朽化対策や、ベテラン技術者の退職に伴う技術伝承が喫緊の課題となっており、その解決の切り札として導入されたのがデジタルツイン(点群やパノラマ写真を活用した3Dビューアー)を基盤とした設備管理システム「INTEGNANCE VR(インテグナンスVR)」だ。本稿では、インテグナンスVR導入の背景から、その効果について、保全と設計それぞれの視点から、お話を伺った。

右からJNC石油化学株式会社市原製造所
保全部 保全担当 次席 市丸 貴幸氏
保全部 設計担当 主任 田原 尚幸氏

市原製造所は、50年以上稼働し続けているプラントが存在し、老朽化に伴う検査や補修、設備更新など、メンテナンスの重要性は、年々高まっているという。一方、ベテラン層による、これまでの徹底した保全対応により、全体的にトラブル件数は減少傾向にあるが、過去の検査・補修記録といった重要な知見が社内に点在しており、「必要な情報をすぐに引き出せる」情報基盤の構築が急務だと市丸氏は話す。またベテランの退職により、属人化していたノウハウが伝承されない問題についても大きな課題を感じており、次世代の保全体制をどう確立するべきか。市丸氏は、その最適解を日々模索しているという。

人手不足と情報の分断がもたらす、保全現場の構造的課題

JNC石油化学株式会社 市原製造所 保全部 保全担当 次席 市丸 貴幸氏

決め手は「速さ」と「保全特化機能」—-インテグナンスVR導入の舞台裏

JNC石油化学市原製造所では、2024年にインテグナンスVRを導入した。当初は、いくつかのソフトウェアを比較検討していたが、導入の決め手となったのは、ブラウンリバースの「撮影クオリティとスピード」、そして「既存の保全システムとの親和性が高い点」であったと田原氏は話す。

もともと市原製造所では、2022年に自社で点群撮影を試みたが、撮影後の活用方法をなかなか見いだせずにいた。そこへ同部署内の方からの紹介でインテグナンスVRを知り、直感的、かつ保全に特化したソフトウェアである点に感銘を受け、市丸氏と共に導入を決めたという。

また、ブラウンリバースが掲げる「ファストデジタルツイン」の考え方にも強く共感したという。過去に点群撮影の経験があった田原氏は、通常であれば、撮影から納品までに1か月を要するところを、わずか1週間で納品したブラウンリバースの撮影チームに大きな驚きと感動を覚えたと振り返る。納品物を見るまで、多少の不安はあったものの、同社がプラントのEPC事業を手がける日揮グループの子会社であり、プラントメンテナンスを熟知した社員が多数在籍していることから、その不安は、すぐに期待へと変わったと田原氏は話す。

JNC石油化学株式会社 市原製造所 保全部 設計担当 主任 田原 尚幸氏

一人あたり年間100時間の稼働削減—-保全と設計を変えたDX

<保全業務>
現在、JNC石油化学市原製造所では、製造部門と保全部門の打ち合わせにおいて、インテグナンスVRを活用することが、スタンダードになりつつある。
広大な敷地に構成されているプラント工場では、トラブル箇所を共有するだけでも、大きな手間がかかるという。インテグナンスVRがあることで、トラブル箇所がピンポイントで、チームに共有できるようになり、今まで多くの時間を要していた「正確な位置情報の共有」により、複数人で行なっていた現場確認の時間と、トラブルに対する対策検討が簡素化され、スムーズに業務が流れるようになったと田原氏は話す。

インテグナンスVRの導入は、一人あたり年間約100時間の稼働削減につながっており、今では現場作業の情報プラットフォームとして、保全業務全体の生産性が底上げされている市丸氏は話す。

<設計>
設計業務においては、主に担当者間の打ち合わせや現場確認に、インテグナンスVRを活用しているという。多くのプロジェクトが並行して進む中で、インテグナンスVRで、事前の現場確認ができるようになったことで、図面には、表現されていない設備や構造物(排水溝やポールなど)をスピーディーに確認できるようになり、現場確認の工数が、大幅に削減されたと田原氏は話す。

また、もともと機器番号が付与されていない建屋の梁や、道路の陥没箇所、扉の故障箇所なども、位置情報と共にピンポイントで管理、共有できることから、経験の浅い担当者であっても、特定の場所へ容易に誘導することが可能と話す。今後は、協力会社にもアカウントを発行し、設計・検査・補修工事業務を横断的に効率化し、さらなる価値を見いだしていきたいという。

教育・技術伝承—-次世代につながる現場基盤の構築

現在、市丸氏と田原氏は、インテグナンスVRをプラント保全業務の教育基盤、技術伝承のプラットフォームに活用できないか、模索を進めている。人材の入れ替わりが激しく、複雑かつ膨大な情報を適切に扱う必要があるプラント業務では、もはや人間の記憶だけに頼ることは困難だ。

そういう意味では、3Dデジタルツイン上に情報付加できるインテグナンスVRは、人間の記憶の脆弱な部分を補完できる、新しい記憶装置とも言える。さらに報告書には記載されない、現場のノウハウや工夫を蓄積することで、これまで属人化していた現場の保全スキルを組織全体で底上げすることもできる。

失敗を単なる失敗で終わらせず、次世代へのアドバイスと捉えることで、今まで現場を守り、継承してきた先陣たちの思いも報われるのかもしれない。これらのデータは、今後確実にAI化される。先陣の知恵が教師データとなったAIと、今の現場を守る従業員の共創が、これからのものづくりを支える最高のチームになるのであろう。

現場に寄り添い、進化し続ける—-ブラウンリバースへの期待と共創

ブラウンリバース社は、とにかく全てにおいて対応スピードが速く、我々からのオーダーに、課題の提起、解決策の提示、機能開発をしてくれることが大きな信頼に繋がっているという。また現場の声を大切にしてくれるので、自然と機能が業務にフィットすると二人は話す。今後、機器や配管の自動登録や横断的な情報の関連付けに期待をしたいと市丸氏は話す。

田原氏は、ブラウンリバースの社員について、「どうすれば、現場作業が楽になるか」を常に考えてくれることに信頼をおいていると話す。点在する情報(仕様や図面、現場ノウハウ)をVR上で一元管理し、視覚的に情報にアクセスすることができるのがインテグナンスVRの面白いところ。非本質的な稼働工数を削減し、本当の意味で人間がやるべき業務に集中できる環境を、今後もブラウンリバースの皆さんと構築していきたいと田原氏は話をしてくれた。今後も、当社として、JNC石油化学市原製造所の保全部の推進力を注目していきたい。

※インタビュー内容、役職、所属は取材当時のものです。

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